メッセンジャー:仁科宣雄師
「救い主の系図」 ( マタイの福音書 1章 1~17節 )
私たちがお互い交わすどんなに小さな約束でも、自分の都合ではなく、「相手」のことを考え、誠意をもって果たさなけれ
ばならないでしょう。神の約束は、私たちを創造した時の「神の愛」によって、宣言され、準備され、遂行されたのです。
Ⅰ.アブラハムの子、ダビデの子、イエス・キリストの系図 (1:1)
冒頭の「系図」は、「創成(生成、出生)」とも訳せます。系図から始まるイエスの働きは、
古い創造に対する新しい創造という主張が込められているとも言えるのです。
マタイの福音書の著者マタイは、イエスがダビデの子孫であり、皆が待ち望んでいる王、メシヤであるという事実をユダヤ人に認めさせるために「系図」は欠かせないものでした。
① (2~6節)アブラハムからダビデ…
救いの歴史は、アブラハムの召命から始まりました。神は、アブラハムに子孫が増え広がると共に子孫の一人によって
全世界が祝福されると約束されました(創世記12:2,3)。イエスの系図には、罪ある女性や異邦人が記され、男と
女の差別が取り除かれ、ユダヤ人と異邦人の差別も取り除かれたことを表しています。
② (6~11節)ダビデからバビロン捕囚…
神がダビデと交わした「あなたの身から出る世継ぎの子」によって「王国を確立させる」(Ⅱサムエル7:12)との
契約とおり、イスラエル王国が設立されました。しかし、主のあわれみに生かされながらも、神の御声に従わなかった
ゆえの国の屈辱、悲劇、滅亡の歴史は、人間は神から与えられた自由意志を用いて、神の友となることも神と心通わす
こともせず、反対に神を無視し、半逆することとなり、神の意図と計画をくじいてしまいました。
③ (12~16節) バビロン捕囚からキリストの誕生…王国の滅亡とともに、ダビデ契約も無効となったかに思われまし
たが、神の側では着々と計画は進んでいました。時が満ち、預言された救い主の誕生をもってダビデ契約は成就し、神
の支配が確立されたのです。人間は、再び神の心通わせて生きることができる「偉大さ」を回復したのです。
この世において、神の代行者として、神の国を建て上げていくという、人間にのみ与えられた大きな使命に生かされて
いるのです。
Ⅱ.聖霊による誕生 (1:16)
イエスの父として選ばれたヨセフですが、そのヨセフは、「ヤコブがマリヤの夫ヨセフを生んだ」と記されています。神は罪人をも系図に入れ、救い主の誕生のために用いられましたが、聖霊によって、ダビデの血統である処女「マリア」を身ごもらせ、「真の神であり…真の人である」救い主を世に遣わし、ダビデ契約を成就させたのでした。そして、このことはイエスご自身が先祖たちの罪を何一つ受け継いではいないことをも表しています。
Ⅲ.神の救いのご計画 (1:17)
人間の心情としては、歴史の闇や恥部は忘れてしまいたいでしょう。しかし聖書はしっ
かり向き合っています。家系につきまとう数々の罪、恥も外聞も含め、末裔のイエスが確実に引き受けたことをこの系図は示しているのです。神の救いのご計画の始まりを記す系図は、イエスが万物の創造に匹敵する「新しい創造」の担い手であることを示しています。
結 論
神は信仰の先達と交わした約束を決して忘れず、民に裏切られても無効にせず、実に二千年以上にわたって果たし続け、「救い主イエス」によって成就させました。そこには、人を創造された時の「愛をもって」が失われることなく、注がれ続けていたのです。自分を取り巻く状況が厳しくでも、必ず約束を果たされる主ご自身を待ち望みましょう。